今回は、令和5年−健保法・問7−A「海外療養費」です。
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現に海外にいる被保険者からの療養費の支給申請は、原則として、事業主等
を経由して行わせ、その受領は事業主等が代理して行うものとし、国外への
送金は行わない。
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「海外療養費」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H18−3−C 】
被保険者又は被扶養者が海外の病院等において療養等を受けた場合に支給
される海外療養費は、療養を受けた日の外国為替換算率を用いて算定する。
【 H11−9−A 】
海外における療養費支給の算定となる邦貨換算率は、その療養を受けた日の
外国為替換算率を用いる。
【 H14−3−C 】
海外出張中の被保険者が海外の病院で療養を受けた場合、その療養費の支給
申請は事業主を経由して行い、事業主が代理受領することになっており、また、
支給額の算定に用いる邦貨換算率は、支給申請日における外国為替換算率を
用いる。
【 H21−6−C 】
現に海外にある被保険者からの療養費等の支給申請は、原則として、事業主
等を経由して行わせるものとし、その支給決定日の外国為替換算率(売レート)
を用いて算定した療養費等を保険者が直接当該被保険者に送金することになっ
ている。
【 H27−2−C 】
現に海外に居住する被保険者からの療養費の支給申請は、原則として事業主
を経由して行うこととされている。また、その支給は、支給決定日の外国為替
換算率(買レート)を用いて海外の現地通貨に換算され、当該被保険者の海外
銀行口座に送金される。
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海外の病院等で療養を受けた場合、そこは保険医療機関等ではないので、現物
給付が行われることはありません。
そのため、被保険者は、とりあえず費用の支払をしておき、後日申請をして、
療養費の支給を受けることになるのですが、海外ですから、通常、日本円で費用
を支払うわけではありません。
とはいえ、保険者が被保険者へ現金給付するのは、もちろん日本円です。
そのため、海外で支払った額を日本円に換算しなければならず・・・
その換算には、いつの外国為替換算率を用いるのかというのが、これらの問
の論点の1つです。
外国為替換算率について、
【 H18−3−C 】と【 H11−9−A 】では、「療養を受けた日」
【 H14−3−C 】では「支給申請日」
のものを用いるとしています。
これらは、いずれも誤りです。
「支給決定日」の外国為替換算率を用います(【 H21−6−C 】は、この点
は正しいです)。
保険者サイドとしては、保険給付をする時点、つまり、「支給決定日」ベース
で療養費の額を算定しますってことです。療養を受けた時点や申請をした時点
では、まだ保険給付が行われるって決まったのではないですから。
また、海外療養費の支給について、【 H14−3−C 】で「支給申請は事業主
を経由して行い、事業主が代理受領することになっており」とありますが、その
とおりです。保険者が、海外にいる被保険者に送金したりするってことはあり
ません(送金ができないってこともあるので)。
なので、「保険者が直接当該被保険者に送金する」とある【 H21−6−C 】は、
誤りです。
【 H27−2−C 】も、「海外銀行口座に送金」とあるので、やはり誤りで、
【 R5−7−A 】は正しいです。
それと、【 H27−2−C 】は、申請に関しては、そのとおりですが、「外国為替
換算率(買レート)を用いて海外の現地通貨に換算」とあります。
前述したように、日本円に換算するのですから、この点でも誤りです。
ちなみに、外国為替換算率は、「買レート」ではなく、「売レート」を用います。
海外療養費については、これらの問題で論点とされている
「支給申請と支給」「支給額の算定」
まずは、この点をしっかりと押さえておきましょう。
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今回は、令和5年−健保法・問6−D「少年院等にある場合の給付制限」です。
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被保険者又は被保険者であった者が、少年院その他これに準ずる施設に収容
されたとき又は刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されたとき
のいずれかに該当する場合には、疾病、負傷又は出産につき、その期間に係る
保険給付(傷病手当金及び出産手当金の支給にあっては、厚生労働省令で定め
る場合に限る。)は行わないが、その被扶養者に係る保険給付も同様に行わない。
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「少年院等にある場合の給付制限」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H22−4−E 】
被扶養者が少年院その他これに準ずる施設に収容されたとき、疾病、負傷
または出産につき、その期間に係る保険給付はすべて行わない。
【 H29−7−D 】
保険者は、被保険者又は被保険者であった者が、刑事施設、労役場その他
これらに準ずる施設に拘禁された場合には、被扶養者に対する保険給付を
行うことができない。
【 H13−4−B[改題]】
被保険者が刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されている
とき、埋葬料(費用の支給を含む。)を除き、被保険者及び被扶養者に対して
その期間に係る給付は行われない。
【 H26−8−C 】
保険者は、被保険者が少年院その他これに準ずる施設に収容されたときには、
疾病、負傷又は出産につき、その期間に係る保険給付(傷病手当金及び出産
手当金の支給にあっては、厚生労働省令で定める場合に限る。)を行わないが、
被扶養者に係る保険給付を行うことは妨げられない。
【 H10−7−C[改題]】
被保険者が刑事施設等にいるときは、公費負担があることからすべての保険
給付が制限されるが、その場合においても、被扶養者に係る保険給付が制限
されることはない。
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「少年院等に収容されている場合の保険給付の制限」に関する問題です。
被保険者や被扶養者が少年院等の施設に収容されたときは、保険給付が制限
されます。
そして、制限されるのは、収容されている者に限られます。
収容されていない者について制限する必要はありませんから。
【 H22−4−E 】では、「保険給付はすべて行わない」としています。
被扶養者が少年院等の施設に収容されたときは、その収容された被扶養者に
関する保険給付(疾病、負傷又は出産に関するもの)は、行われませんが、
「被保険者」や「他に被扶養者がある場合における、その被扶養者」に関する
保険給付は制限されません。したがって、誤りです。
【 R5−6−D 】、【 H29−7−D 】、【 H13−4−B[改題]】の3問
では、「被保険者(又は被保険者であった者)が刑事施設、労役場その他これ
らに準ずる施設に拘禁されている」という状況で、被扶養者に関する保険給付
も行わないとしています。
いずれも誤りです。
被保険者が刑事施設等に拘禁されていても、被扶養者に関する保険給付は制限
されません。
なので、「被扶養者に係る保険給付を行うことは妨げられない」とある
【 H26−8−C 】は、正しいです。
それでは、【 H10−7−C[改題]】ですが、こちらは、
「被扶養者に係る保険給付が制限されることはない」
としています。この点は正しいです。
ただ、被保険者に関して「すべての保険給付が制限される」としています。
制限されるのは、「疾病、負傷又は出産」に関する保険給付です。
これらについては、公費により面倒をみてもらうことができるからです。
一方、死亡については、そうではないので、健康保険から保険給付は行われます。
ということで、【 H10−7−C[改題]】は誤りです。
それと、【 H26−8−C 】に「傷病手当金及び出産手当金の支給にあっては、
厚生労働省令で定める場合に限る」とあります。
これは、未決拘留中の期間は支給を制限せず、刑が確定した後について、支給を
制限するということを意味していて、そのとおりです。
この規定については、これらの問題にあるように、誰が制限の対象となるのか、
どの保険給付が制限の対象となるのか、どちらも論点にされるので、出題された
ときは、どちらについても、問題文をしっかり確認しましょう。
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今回は、令和5年−健保法・問6−C「保険給付の調整」です。
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被保険者に係る療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外
併用療養費、療養費、訪問看護療養費、移送費、家族療養費、家族訪問看護
療養費若しくは家族移送費の支給は、同一の疾病又は負傷について、他の法令
の規定により国又は地方公共団体の負担で療養又は療養費の支給を受けたとき
は、その限度において、行わない。
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「保険給付の調整」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H25−5−A 】
災害救助法が発動され、負傷した70歳未満の被保険者に対して都道府県から
応急的な医療が行われた場合には、その費用の70%を健康保険が、25%を
都道府県が負担することとされており、5%が被保険者の負担となる。
【 H20−7−B 】
結核患者である健康保険の被保険者が公費負担による通院医療を受ける場合、
原則として、その費用の70%を健康保険が、30%を都道府県が負担することと
されており、当該被保険者の負担はない。
【 H12−7−D 】
災害救助法の指定地区で健康保険の被保険者が被災し医療を必要とするとき
は、健康保険の療養の給付が優先し、災害救助法による救助は健康保険の給付
の及ばないものに限られる。
【 H17−5−E 】
災害救助法の規定により被災者の医療について公費負担が行われた時は、
その限度において健康保険の保険給付は行われない。
【 H30−3−A 】
被保険者に係る所定の保険給付は、同一の傷病について、災害救助法の規定
により、都道府県の負担で応急的な医療を受けたときは、その限度において
行われない。
【 H12−8−D 】
保険優先の公費負担医療と健康保険が併用された場合、健康保険の一部負担
金に相当する金額の範囲内で公費負担医療から支給される。
【 H16−8−B 】
生活保護法による医療扶助と健康保険による保険給付が併用される場合は、
健康保険による保険給付が優先され、費用のうち健康保険による保険給付が
及ばない部分について、医療扶助の対象となる。
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「保険給付の調整」に関する問題です。
公費負担による医療や他制度に基づく医療が行われる場合、健康保険との
間で調整が行われます。
その根拠となる規定を条文どおり出題したのが【 R5−6−C 】で、その
とおり正しいです。
この規定では、単に「その限度において、行わない」としていますが、この
調整は、実際には一律に行われるのではなく、対象となる制度によって異なり
ます。
それらについて、具体的な出題がいろいろと行われていますが、
健康保険の保険給付が優先するのはどのような場合なのか、
健康保険の保険給付より優先して行われるのはどのようなものなのか、
これを論点とすることがよくあります。
例えば、災害救助法による医療は健康保険の保険給付より優先しますが、生活
保護や結核患者に対する公費負担は健康保険の保険給付が優先します。
【 H25−5−A 】では、
「70%を健康保険が、25%を都道府県が負担することとされており、5%が
被保険者の負担」という割合を挙げています。
前述したように、災害救助法の規定により医療が行われる場合、健康保険より
優先します。そして、被保険者に費用負担は生じません。
ですので、誤りです。
この負担割合は、【 H20−7−B 】にある結核患者に係る公費負担医療の
取扱いとの混同を狙ったものです。
ただ、【 H20−7−B 】も誤りです。
一般に結核患者に対しては、都道府県が費用の100分の95を負担します。
ただし、この場合、保険優先の扱いとなるので、まず健康保険が100分の70
の負担をします。
そして、保険が適用されないとした場合の公費負担の100分の95と健康保険
適用分の100分の70との差(100分の25)が、実際の公費負担となります。
被保険者は、いずれからも負担がない部分である「費用の100分の5」を負担
することになります。
【 H12−7−D 】と【 H17−5−E 】、【 H30−3−A 】も災害救助法
に関しての問題で、【 H12−7−D 】は災害救助法より健康保険のほうが優先
する内容なので誤りで、【 H17−5−E 】と【 H30−3−A 】は正しいです。
【 H12−8−D 】と【 H16−8−B 】は、いずれも健康保険が優先される
場合の取扱いで、正しいです。
ということで、どちらが優先なのか、整理をしておきましょう。
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今回は、令和5年−健保法・問5−D「被保険者資格の喪失」です。
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任意継続被保険者が任意の資格喪失の申出をしたが、申出のあった日が
保険料納付期日の10日より前であり、当該月の保険料をまだ納付していな
かった場合、健康保険法第38条第3号の規定に基づき、当該月の保険料の
納付期日の翌日から資格を喪失する。
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「被保険者資格の喪失」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H7−10−B 】
任意継続被保険者が保険料の納付期日までに納付しなかった場合、保険料
の納付の遅延について、保険者において正当な事由があると認めるときを
除き、保険料の納付期日の翌日にその資格を喪失する。
【 H9−3−B[改題]】
任意継続被保険者が納付期日までに保険料を納付できなかった場合において、
遅延につき保険者が正当な理由があると認めた場合は、被保険者の資格は
喪失しない。
【 H12−1−B 】
任意継続被保険者は、正当な理由なく納付期限までに保険料を納めなかった
場合、被保険者資格を喪失する。
【 H29−2−E 】
任意継続被保険者に関する保険料の納付期日は、初めて納付すべき保険料を
除いてはその月の10日とされている。任意継続被保険者が初めて納付すべき
保険料を除き、保険料を納付期日までに納めなかった場合は、納付の遅延に
ついて正当な理由があると保険者が認めたときを除き、その翌日に任意継続
被保険者の資格を喪失する。
【 H27−5−E 】
任意継続被保険者が、保険料(初めて納付すべき保険料を除く。)を納付期日
までに納付しなかったときは、納付の遅延について正当な理由があると保険
者が認めた場合を除き、督促状により指定する期限の翌日にその資格を喪失
する。
【 H10−3−B 】
特例退職被保険者は、保険料を納付期日までに納付しない場合、その資格を
喪失する。
【 H14−1−B 】
特例退職被保険者が保険料を納付期日までに納付しなかった場合は、被保険者
資格を喪失する。
【 H21−9−B 】
特例退職被保険者が保険料(初めて納付すべき保険料を除く。)を、正当な
理由がなく、納付期日までに納付しなかったときは、被保険者資格を喪失
する。
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【 H7−10−B 】から【 H29−2−E 】までの4問は、保険料の滞納により、
任意継続被保険者の資格を喪失するか否かを問う問題です。
任意継続被保険者の保険料の納付期日は、一般の被保険者と異なり、その月
の10日(初めて納付すべき保険料については保険者の指定する日)とされて
います。
そして、その納付期日までに保険料(初めて納付すべき保険料を除きます)
を納付しないときは、督促されることなく、原則としてその翌日に任意継続
被保険者の資格を喪失します。
ただし、正当な理由があるのであれば、資格は喪失しません。
したがって、この4問いずれも正しいです。
この資格喪失について、その次の【 H27−5−E 】では、「督促状により
指定する期限の翌日にその資格を喪失する」とありますが、任意継続被保険者
が、保険料(初めて納付すべき保険料を除きます)を納付期日までに納付しな
かった場合、前述のとおり、保険料の納付について督促されることはありません。
つまり、直ちに資格を喪失するので、誤りです。
ちなみに、保険料を滞納した場合、任意的に加入している被保険者はその資格
を喪失するのが一般的です。厚生年金保険、国民年金などでも個人で任意的
に加入する者の場合、そのような取扱いをします。ただ、督促がされるか否か
という点は違っているので、この違いは注意しておきましょう。
それと、【 R5−5−D 】では、「任意の資格喪失の申出をした」とあります
が、任意の資格喪失の申出による資格喪失の時期より先に他の資格喪失事由
(保険料の滞納等)が生じたのであれば、その時点で資格を喪失することに
なります。【 R5−5−D 】は正しいです。
ところで、特例退職被保険者、この資格も任意的なものですが、その資格の
ベースは国民健康保険の退職被保険者です。国民健康保険では、保険料の
滞納による資格の喪失という規定はありません。
そのため、この考え方に合わせ、もともと、特例退職被保険者が保険料を滞納
しても資格を喪失しませんでした。
ところが、平成18年改正により、任意継続被保険者と同様に扱うことになり
ました。
つまり、保険料を滞納すると資格を喪失することになったのです。
そのため、【 H10−3−B 】、【 H14−1−B 】は、出題当時、誤りでした
が、現在は正しい内容となっています。
【 H21−9−B 】も、正しいです。
この問題では「初めて納付すべき保険料を除く」としていますが、この場合、
被保険者とならなかったとみなされます。この点、任意継続被保険者について
も同様なのですが・・・・
他の問題では記述がないものがありますよね!
ですので、厳密にいえば、そのような問題は、正しいと判断するのは、微妙な
ところで・・・・・
直接の論点ではないときは、とりあえず、記述がなくても正しいと判断し、他の
肢との比較で、最終的に正誤を判断したほうがよいでしょう。
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今回は、令和5年−健保法・問4−E「出産育児一時金等の額」です。
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令和5年4月1日以降、被保険者の被扶養者が産科医療補償制度に加入
する医療機関等で医学的管理の下、妊娠週数22週以降に双子を出産した
場合、家族出産育児一時金として、被保険者に対し100万円が支給される。
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「出産育児一時金等の額」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H27−6−A[改題]】
出産育児一時金の額は、公益財団法人日本医療機能評価機構が運営する産科
医療補償制度に加入する医療機関等の医学的管理下における在胎週数22週に
達した日以後の出産(死産を含む。)であると保険者が認めたときには50万円、
それ以外のときには48万8千円である。
【 H21−3−E[改題]】
令和5年8月に出産し所定の要件に該当した場合については、48万8千円に
3万円を超えない範囲内で保険者が定める額を加算した額が支給される。
【 H24−9−D[改題]】
出産育児一時金の金額は48万8千円であるが、公益財団法人日本医療機能
評価機構が運営する産科医療補償制度に加入する医療機関等において出産した
ことが認められた場合の出産育児一時金は、在胎週数第22週以降の出産の
場合、1万2千円が加算され50万円である。
【 H19−5−C[改題]】
多胎妊娠による出産の場合、出産育児一時金又は家族出産育児一時金は第一子
に48万8千円(所定の要件に該当する病院等による医学的管理の下における
出産であると保険者が認めるときは、48万8千円に3万円を超えない範囲内
で保険者が定める額を加算した額)、第二子以降は一人につき第一子の80%に
相当する額が支給される。
【 H21−3−D[改題]】
出産育児一時金又は家族出産育児一時金は、双子等の出産の場合には、胎盤数
にかかわらず、一産児排出を一出産と認め、胎児数に応じて支給される。
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出産育児一時金・家族出産育児一時金の額については、過去に何度も出題
されています。
では、論点はといえば、「その額」の場合が多々あります。
出産育児一時金の額は、原則として「48万8,000円」とされていますが、
所定の要件に該当するものによる医学的管理の下における出産であると
保険者が認めるとき(加算対象出産の場合)は、48万4,000円に、3万円
を超えない範囲内で保険者が定める額を加算した額となります。
ですので、【 H21−3−E[改題]】は正しいです。
では、この加算額、これは、産科医療補償制度の掛金相当額を保険給付
として支給しようというものです。
掛金の額が変わることがあるので、「3万円を超えない範囲内で保険者が
定める額」と規定していて、現在は1万2,000円とされています。
ということで、加算対象出産である場合は
「48万8,000円+1万2,000円=50万円」が支給額となります。
【 H27−6−A[改題]】と【 H24−9−D[改題]】は、正しいです。
【 H19−5−C[改題]】については、ちょっと論点が違っています。
支給額についてですが、第一子と第二子以降では額が異なる内容になってい
ます。第二子以降についても同額ですから誤りです。
出産育児一時金の額は、出産に要する費用を考慮して定められているので、
第何子かによって異なることはありません。
それと、家族出産育児一時金についても、その額は同じです。
被保険者が出産した場合であっても、被扶養者が出産した場合であっても、
出産に要する費用は変わりませんから。
【 H21−3−D[改題]】は、額そのものが論点ではなく、双子等の出産の
場合はどうなるのかということを論点にしています。
出産育児一時金は、この問題のとおり、胎児数に応じて支給されます。
なので、【 R5−4−E 】にあるとおり、双子を出産した場合、2倍の
額である100万円が支給されます。
もし、三つ子であれば3倍の額となります。
したがって、この2問は正しいです。
健康保険法の選択式は、数字を空欄にする確率がかなり高いので、この額
を空欄にした出題があり得ます。
正確に覚えておきましょう。
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今回は、令和5年−健保法・問3−ウ「前納」です。
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任意継続被保険者は、将来の一定期間の保険料を前納することができるが、
前納された保険料については、前納に係る期間の各月の初日が到来したとき
に、それぞれその月の保険料が納付されたものとみなす。
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「前納」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H22−健保−選択 】
任意継続被保険者は、将来の一定期間の保険料を前納することができる。前納
された保険料については、前納に係る期間の( A )が到来したときに、
それぞれその月の保険料が納付されたものとみなす。
任意継続被保険者は、保険料を前納しようとするときは、前納しようとする額
を前納に係る期間の( B )までに払い込まなければならない。
前納すべき保険料額は、前納に係る期間の各月の保険料の合計額から、その
期間の各月の保険料の額を( C )による複利現価法によって前納に係る
期間の最初の月から当該各月までのそれぞれの期間に応じて割り引いた額の
合計額を控除した額とする。
保険料の前納期間は、4月から9月まで、もしくは10月から翌年3月までの
6か月間または4月から翌年3月までの12か月間を単位として行うものとされ
ているが、例えば、任意継続被保険者の資格を取得した月が4月であった場合、
最も早く前納を行うことができる前納に係る期間の初月は、( D )である。
【 H9−健保3−A 】
任意継続被保険者は、一定期間の保険料を前納することができるが、前納され
た保険料は、前納期間の各月の初日が到来して初めてその月分の保険料が納入
されたこととなる。
【 H13−健保2−B 】
任意継続被保険者は、4月から9月まで若しくは10月から翌年3月までの
6か月間又は4月から翌年3月までの12か月間を単位として保険料を前納
することができるが、保険料を前納しようとする場合は、前納しようとする
額を前納に係る期間の初月の1日までに払い込まなければならない。
【 H17−健保3−A 】
任意継続被保険者又は特例退職被保険者が、将来の一定期間の保険料を前納
しようとするときは、前納しようとする額を前納に係る期間の初月の前月末日
までに払い込まなければならない。
【 H21−国年2−B 】
保険料の前納の際に控除される額は、前納に係る期間の各月の保険料の
合計額から、当該期間の各月の保険料の額を年4分の利率による複利
現価法によって前納に係る期間の最初の月から当該各月(口座振替に
よる納付は当該各月の翌月)までのそれぞれの期間に応じて割り引いた
額の合計額の10円未満を端数処理した額を控除した額とする。
☆☆======================================================☆☆
「前納」に関する問題です。
まず、【 H22−健保−選択 】の答えは、
A:各月の初日
B:初月の前月末日
C:年4分の利率
D:5月
です。
【 H9−健保3−A 】と【 R5−健保3−ウ 】は、【 H22−健保−選択 】
の空欄Aの部分に関する問題です。
前納された保険料は、いつ納付されたものとみなされるのかというのが論点です。
「各月の初日」の到来なので、いずれも正しいです。
この点は、国民年金の前納の場合は、「各月が経過した際」に納付されたものと
みなされることになっています。これと混同しないように。
次に、【 H13−健保2−B 】と【 H17−健保3−A 】を見ると、
これらは、【 H22−健保−選択 】の空欄Bの部分に関する問題です。
「前納」、つまり、前もって納めるってことですから、前納期間の前に納めること
になります。
そのため、「初月の前月末日」までに納めなければなりません。
前納期間が始まってしまえば、前納ではないですからね。
【 H13−健保2−B 】は誤り、【 H17−健保3−A 】は正しいです。
【 H21−国年2−B 】は、【 H22−健保−選択 】の空欄Cの部分に関する
問題です。
前納した場合、保険料の割引が行われますが、その率が論点です。
で、この率は、国民年金法でも同じ「年4分の利率」です。
ということで、これも正しいです。
ちなみに、【 H22−健保−選択 】の空欄Cの部分に関する問題文は適切な
ものとなっていません。前納すべき保険料額は、「当該期間の各月の保険料の
額から政令で定める額を控除した額」とされていて、この「政令で定める額」
の記載になっています。
それと、【 H22−健保−選択 】の空欄Dについては、応用問題です。
資格取得が4月だった場合です。この場合、4月からは前納することは
できません。
では、10月まで待つのかといえば、そこまで待つ必要はありません。
待たなければいけないんだと判断してしまうと、答えを「10月」なんて
しちゃいますね。
このような場合、
「当該6月又は12月の間において、任意継続被保険者の資格を取得した者
又はその資格を喪失することが明らかである者については、当該6月間又は
12月間のうち、その資格を取得した日の属する月の翌月以降の期間又はその
資格を喪失する日の属する月の前月までの期間の保険料について前納を行う
ことができる」
という規定があります。
これにより、4月に資格を取得したのであれば、5月分から前納することが
できます。
いずれにしても、今後、択一式で出題される可能性が高いですし、似たような
内容が国民年金法から出題されるってこともあるので、よく確認をしておきま
しょう。
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今回は、令和5年−健保法・選択「高額療養費の多数回該当」です。
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全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者から健康保険組合の被保険者に
変わる等、管掌する保険者が変わった場合、高額療養費の支給回数は( D )。
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「高額療養費の多数回該当」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H17−4−D[改題]】
高額療養費の支給回数は、健康保険組合の被保険者から全国健康保険協会
管掌健康保険の被保険者に変わった場合には通算されない。
【 H16−4−E[改題]】
高額療養費の多数回該当については、転職により健康保険組合の被保険者で
あった者が全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者に変わった場合でも、
高額療養費の支給回数は通算される。
【 H18−6−A[改題]】
転職により、健康保険組合の被保険者から全国健康保険協会管掌健康保険の
被保険者に変更した場合や、全国健康保険協会管掌健康保険の業務を分掌
する年金事務所が変更された場合には、高額療養費の算定に当たっての支給
回数は通算されない。
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「高額療養費の多数回該当」に関する問題です。
【 H17−4−D[改題]】と【 H16−4−E[改題]】は、いずれも健康保険
組合の被保険者から全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者になった場合
を出題していますが、
【 H17−4−D[改題]】では支給回数は「通算されない」とあり、
【 H16−4−E[改題]】では支給回数は「通算される」とあり、
まったく逆のことをいっています。ですから、どちらかが誤りです。
支給回数については、保険者ごとで判断します。
つまり、保険者が変われば通算されないということになります。
【 H17−4−D[改題]】:正しい 【 H16−4−E[改題]】:誤り
このように択一式で論点にされる箇所は選択式でも狙われることがあり、
それが【 R5−選択 】で、答えは「通算されない」です。
では、【 H18−6−A[改題]】ですが、健康保険組合の被保険者から全国
健康保険協会管掌健康保険の被保険者に変更した場合だけでなく、業務を
分掌する年金事務所が変更された場合という論点も加わっています。
健康保険組合の被保険者から全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者
に変更となったら、当然、通算されませんが、業務を分掌する年金事務所
が変更されたという場合、これは、保険者の変更ではないので、支給回数
は通算されます。
ということで、支給回数は通算されないというのは、誤りです。
ちなみに、被保険者が複数の事業所に使用される場合、「2以上の事業所
に係る日本年金機構の業務が2以上の年金事務所に分掌されているときは、
被保険者は、その被保険者に関する日本年金機構の業務を分掌する年金
事務所を選択しなければならない」という規定があります。
これは、
その者に関する事務を行う年金事務所を選択するものであって・・・・・
年金事務所ごとに高額療養費の支給回数をみる、というものでありません
から、混同しないようにしましょう。
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今回は、令和5年−徴収法〔雇保〕・問10−A「通貨以外のもので支払われる
賃金」です。
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労働保険徴収法における「賃金」のうち、食事、被服及び住居の利益の評価に
関し必要な事項は、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長が定める
こととされている。
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「通貨以外のもので支払われる賃金」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H19−雇保9−D 】
労働保険徴収法における「賃金」は、通貨で支払われるもののみに限られず、
食事、被服及び住居の利益のほか、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業
安定所長の定めるものも含むものとされている。
【 R元−雇保10−C 】
労働保険徴収法第2条第2項の賃金に算入すべき通貨以外のもので支払われる
賃金の範囲は、労働保険徴収法施行規則第3条により「食事、被服及び住居の
利益のほか、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長の定めるところ
による」とされている。
【 H14−雇保8−D 】
労働保険料の算定の基礎となる賃金のうち、通貨以外のもので支払われるもの
の評価額は、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長が定める。
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労働保険徴収法において、「賃金」とは、「賃金、給料、手当、賞与その他
名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」
をいい、通貨で支払われるもののみに限らず、一定の範囲の現物給与も
含まれます。
ただ、現物給与を何でもかんでも賃金として扱うのは適当ではないので、
「通貨以外のもので支払われるものであって、厚生労働省令で定める範囲外
のものを」除くことにしています。
言い方を変えれば、「厚生労働省令で定める範囲」のものは、賃金とする
ということです。
この「厚生労働省令で定める範囲」は、食事、被服及び住居の利益のほか、
所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長の定めるところによる
こととされています。
つまり、食事、被服及び住居の利益で労働の対償として供与されるものの
ほかは、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長が具体的に定めた
範囲内の現物給与に限り賃金に算入されます。
現物給与の評価額については、過去においては「所轄労働基準監督署長又は
所轄公共職業安定所長」が定めることとされていましたが、社会保険において
は、現物給与の評価額については、地方社会保険事務局長が定めることとされ
ていて、評価内容も異なっていました。
そのため、社会保険と労働保険の徴収事務の一元化を推進する観点から、社会
保険・労働保険とも同じ内容を厚生労働大臣が統一して定めることとし、事業主
の事務負担軽減を図りました。
これにより、範囲を定めるのは所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長
ですが、賃金のうち通貨以外のもので支払われるものの評価(食事、被服及び
住居の利益の評価)に関し必要な事項は、厚生労働大臣が定めることとされて
います。
ということで、
【 H19−雇保9−D 】と【 R元−雇保10−C 】は正しいですが、評価に
関し必要な事項を定めるのを「所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定
所長」としている【 R5−雇保10−A 】は、誤りです。
【 H14−雇保8−D 】は、出題時は正しかったのですが、現在の規定では
誤りです。
行政官職名を論点にした問題はよく出るので、「所轄労働基準監督署長又は
所轄公共職業安定所長」なのか、「厚生労働大臣」なのか、間違えないよう
にしましょう。
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今回は、令和5年−徴収法〔雇保〕・問9−D「雇用保険印紙の買戻し」です。
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事業主は、雇用保険印紙が変更されたときは、その変更された日から1年間、
雇用保険印紙を販売する日本郵便株式会社の営業所に雇用保険印紙購入通帳
を提出し、その保有する雇用保険印紙の買戻しを申し出ることができる。
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「雇用保険印紙の買戻し」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H18−雇保9−B 】
事業主は、雇用保険に係る保険関係が消滅したとき、日雇労働被保険者を使用
しなくなったとき(保有する雇用保険印紙の等級に相当する賃金日額の日雇
労働被保険者を使用しなくなったときを含む。)、又は雇用保険印紙が変更さ
れたときのいずれかに該当する場合においては、その保有する雇用保険印紙
の買戻しを申し出ることができるが、雇用保険印紙が変更された場合の買戻し
の期間は、雇用保険印紙が変更された日から6か月間である。
【 H12−雇保9−E[改題]】
雇用保険印紙が変更された場合、事業主は、変更の日から6か月間に限り、
雇用保険印紙を販売する日本郵便株式会社の営業所に、その保有する変更前
の雇用保険印紙の買戻しを申し出ることができる。
【 H14−雇保9−E 】
日雇労働被保険者を使用しなくなったために雇用保険印紙が不要となった
場合、事業主は、買戻しを申し出ることができるが、買戻しの期間は、日雇
労働被保険者を使用しなくなった日から6か月間とされている。
【 H15−雇保10−B 】
雇用保険に係る保険関係が消滅したとき、日雇労働被保険者を使用しなく
なったとき又は保有する雇用保険印紙の等級に相当する賃金日額の日雇労働
被保険者を使用しなくなったときは、事業主は、その保有する雇用保険印紙
の買戻しを申し出ることができるが、その際には、雇用保険印紙購入通帳に
その事由に該当することについてあらかじめ所轄公共職業安定所長の確認を
受けなければならない。
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「印紙保険料」に関する問題も、頻出です。
その中で、ここでは、雇用保険印紙の買戻しについてみていきます。
雇用保険印紙は、日雇労働被保険者に賃金を支払うつど貼付し、消印するもの
なので、日雇労働被保険者を雇用しようとする事業主は、あらかじめ購入して
おく必要があります。
そのため、必要なくなった場合は、買戻しをすることができるようにしています。
その雇用保険印紙の買戻しについては、簡単にいえば、
「雇用保険の保険関係が消滅した」
「日雇労働被保険者を使用しなくなった」
「印紙保険料(雇用保険印紙)が変更された」
いずれかの場合に限って、行うことができます。
その場合、買戻しの期限が定められているものがあります。
また、公共職業安定所長の確認が必要となるものがあります。
出題の論点の多くは、この点です。
【 R5−雇保9−D 】と【 H18−雇保9−B 】は、買戻しの期限が論点です。
雇用保険印紙が変更された場合に限り、買戻しの期限があり、その期限は「変更
された日から6か月間」です。
したがって、
「1年間」とある【 R5−雇保9−D 】は誤りで、【 H18−雇保9−B 】は
正しいです。
それと、【 H12−雇保9−E[改題]】も正しいです。
一方、【 H14−雇保9−E 】は、日雇労働被保険者を使用しなくなった場合の
買戻しです。
この場合は、買戻し期間に制限はないので、誤りです。
ただ、公共職業安定所長の確認が必要となります。
【 H15−雇保10−B 】では、そこを論点にしていて、正しい内容です。
ということで、どの場合に期限があるのか、確認が必要なのか、判断できるよう
にしておきましょう。
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今回は、令和5年−徴収法〔雇保〕・問8−D「延納」です。
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令和4年4月1日に労働保険の保険関係が成立して以降金融業を継続して
営んでおり、労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託している事業主
は、令和5年度の保険年度の納付すべき概算保険料の額が10万円であるとき、
その延納の申請を行うことはできない。
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「延納」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H14−労災9−C 】
有期事業であって、納付すべき概算保険料の額が75万円以上のもの又は当該
事業に係る労働保険事務の処理が労働保険事務組合に委託されているもの
(事業の全期間が6月以内のものを除く。)についての事業主は、概算保険料
申告書を提出する際に延納の申請をした場合には、その概算保険料を、その
事業の全期間を通じて、所定の各期に分けて納付することができる。
【 H17−雇保10−A 】
事業の全期間が6か月を超える有期事業については、納付すべき概算保険料の
額が75万円以上でなければ労働保険料を延納することができないが、労働
保険事務の処理を事務組合に委託している場合には、概算保険料の額のいかん
にかわらず延納することができる。
【 H13−雇保8−A 】
労災保険及び雇用保険の保険関係が保険年度当初に共に成立している継続事業
については、納付すべき概算保険料の額が40万円以上でなければ、延納をする
ことができないが、労働保険事務の処理を事務組合に委託している場合には、
概算保険料の額の如何にかかわらず延納することができる。
【 H19−労災8−A 】
労災保険に係る労働保険の保険関係及び雇用保険に係る労働保険の保険関係
が保険年度の当初に共に成立している継続事業であって、納付すべき概算保険
料の額が40万円以上のもの又は当該事業に係る労働保険事務の処理が労働
保険事務組合に委託されているものについての事業主は、概算保険料の延納
の申請をした場合には、その概算保険料を所定の各期に分けて納付すること
ができる。
【 H29−労災10−オ 】
労働保険事務の処理が労働保険事務組合に委託されている事業についての
事業主は、納付すべき概算保険料の額が20万円(労災保険に係る保険関係
又は雇用保険に係る保険関係のみが成立している事業については、10万円)
以上(当該保険年度において10月1日以降に保険関係が成立したものを
除く。)となる場合であれば、労働保険徴収法に定める申請をすることに
より、その概算保険料を延納することができる。
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延納ができるか否か、その要件に関する問題です。
概算保険料の額、これが少なければ、事業主に大きな負担がかかるわけでは
ないので、わざわざ分割した納付を認める必要はありません。
そのため、概算保険料の額が少額の場合、延納はできないというのが基本的な
考え方です。
ただし、そのような場合でも、労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託
しているときは、話は別。延納が可能になります。
これは継続事業であっても、有期事業であっても同じ考え方です。
具体的には、
(1) 継続事業の場合、概算保険料の額が40万円(労災保険に係る保険関係又は
雇用保険に係る保険関係のみが成立している事業については、20万円)以上
であること、有期事業の場合、概算保険料の額が75万円以上であること
(2) 当該事業に係る労働保険事務の処理が労働保険事務組合に委託されている
こと
いずれかに該当することが延納の要件となります。
ということで、
【 H14−労災9−C 】、【 H17−雇保10−A 】、【 H13−雇保8−A 】、
【 H19−労災8−A 】は、いずれも正しいですが、【 H29−労災10−オ 】
と【 R5−雇保8−D 】は誤りです。
労働保険事務の処理が労働保険事務組合に委託されている事業についての
事業主は、納付すべき概算保険料の額にかかわらず、その他の要件を満たし
ていれば、その概算保険料を延納することができます。
委託の有無による違い、継続事業と有期事業との違い、これらは今後も論点と
されるので、間違えないようにその違いを整理しておきましょう。
今回は、令和5年−労災法・問10−C「継続事業の一括」です。
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継続事業の一括に当たって、雇用保険に係る保険関係が成立している事業
のうち二元適用事業については、それぞれの事業が労災保険率表による事業
の種類を同じくしている必要はない。
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「継続事業の一括」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H6−労災8−D[改題]】
継続事業の一括は、原則として労災保険率表による事業の種類を同じくする
ことが条件であるが、雇用保険に係る保険関係が成立している二元適用事業
の一括については、この限りではない。
【 H21−雇保8−B 】
継続事業の一括の認可については、労災保険率表による事業の種類を同じく
することがその要件とされているが、雇用保険に係る保険関係が成立している
二元適用事業の場合は、労災保険率表による事業の種類を同じくする必要はない。
【 H26−雇保8−D 】
継続事業の一括に関する厚生労働大臣の認可の要件の一つとして、「それぞ
れの事業が、事業の種類を同じくすること。」が挙げられているが、雇用保険
に係る保険関係が成立している二元適用事業については、この要件を必要と
しない。
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「継続事業の一括」に関する問題です。
継続事業の一括が行われるための要件はいくつかありますが、その1つに
「それぞれの事業が、事業の種類を同じくすること」があります。
継続事業の一括は、事業主と政府の事務処理の便宜と簡素化を図るために行う
ことができるようにしたものです。
もし事業の種類が異なるものを一括することができるようであれば、事務
処理は簡素化せず、逆に煩雑になってしまうので、そのようなものは一括の
対象にならないようにしています。
そして、この要件は、保険関係の成立形態にかかわらず、つまり、二元適用
事業であって、雇用保険の保険関係が成立している二元適用事業についても、
適用されます。
ここでいう、「事業の種類」は、労災保険率表に基づく種類です。
そのため、「雇用保険に係る保険関係が成立している二元適用事業」について
は、これは関係ないだろうと思わせようとしたのでしょうが、この要件を必要
としています。
ということで、4問すべて誤りです。
難しい内容ではないので、出題されたとき、間違えないようにしましょう。
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今回は、令和5年−雇用法・問3−B「賃金日額」です。
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支給額の計算の基礎が月に対応する住宅手当の支払が便宜上年3回以内に
まとめて支払われる場合、当該手当は賃金日額の算定の基礎に含まれない。
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「賃金日額」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H22−4−B 】
賃金日額の計算に当たり、家族手当、通勤手当及び住宅手当は、すべて賃金
総額から除外されるので、それらの多寡によって基本手当の日額が異なること
はない。
【 H19−2−A 】
基本手当の日額の算定の基礎となる賃金日額の計算に当たり、時間外労働や
休日労働に対する手当は、賃金総額から除外される。
【 H16−3−A 】
毎年2回、6月と12月に業績に応じて支払われる賞与は、就業規則に明確
な規定がある場合であっても賃金日額の計算から除外されるので、その額
の多寡により基本手当の日額が異なることはない。
【 H21−2−E 】
雇用保険被保険者離職証明書に当該被保険者の賃金額を記載するに当たって
は、年2回、6月と12月に業績に応じて支給される賞与は除外しなければ
ならない。
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「賃金日額の算定から除外されるもの」を論点とした問題です。
賃金日額の算定に含めないのは、「臨時に支払われる賃金」及び「3か月を
超える期間ごとに支払われる賃金」です。
ボーナスとかを含めてしまうと、離職の時期によって、賃金日額が大幅に
違ってしまうなんてことがあり得ます。そのため、このような賃金は含め
ないようにしています。含めないのは、この2つです。
これら以外の賃金は、賃金日額の算定に含まれます。
【 H22−4−B 】では、家族手当、通勤手当、住宅手当を除くとしています。
誤りです。
労働基準法の割増賃金の計算の基礎となる賃金と勘違いしないように。
【 H19−2−A 】では、時間外労働や休日労働に対する手当を除くとして
います。これらも、含まれるので、やはり、誤りです。
これらに対して、
【 H16−3−A 】では、「毎年2回、6月と12月に業績に応じて支払われ
る賞与」を除外するとしています。この賞与は「3か月を超える期間ごとに
支払われる賃金」です。
そのため、「除外する」で、正しいです。
【 R5−3−B 】は、年3回以内の支払としていますが、単に支払事務の
便宜等のために、このような支払いとしているのであって、「3か月を超える
期間ごとに支払われる賃金」とはいえません。
なので、設問の住宅手当は、賃金日額の算定の基礎に含まれるため、誤りです。
【 H21−2−E 】は、応用問題ですね。
単純に、賃金日額に「含む」「含まない」ということをいっているのではなく、
離職証明書に記載する賃金額に含むのか、含まないのかという問い方をして
います。
離職証明書に記載された内容が賃金日額の計算に用いられるってことを知っ
ていれば、簡単に判断できます。
「年2回、6月と12月に業績に応じて支給される賞与」は、「3か月を超える
期間ごとに支払われる賃金」なので、賃金日額の算定から除く、つまり、離職
証明書に記載すべき賃金からは除外することになります。
正しいです。
この論点は、具体例で出題してくることが多いので、そのようなものであっても、
しっかりと正誤の判断ができるようにしておきましょう。
今回は、令和5年−徴収法〔労災〕・問9−D「労働保険事務組合等の納付責任」
です。
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労働保険事務組合事務処理規約に規定する期限までに、確定保険料申告書
を作成するための事実を事業主が報告したにもかかわらず、労働保険事務
組合が労働保険徴収法の定める申告期限までに確定保険料申告書を提出しな
かったため、所轄都道府県労働局歳入徴収官が確定保険料の額を認定決定し、
追徴金を徴収することとした場合、当該事業主が当該追徴金を納付するため
の金銭を当該労働保険事務組合に交付しなかったときは、当該労働保険事務
組合は政府に対して当該追徴金の納付責任を負うことはない。
☆☆======================================================☆☆
「労働保険事務組合等の納付責任」に関する問題です。
次の問題をみてください。
☆☆======================================================☆☆
【 H25−雇保8−A 】
労働保険事務組合は、概算保険料の納期限が到来しているにもかかわらず、
委託事業主が概算保険料の納付のための金銭を労働保険事務組合に交付し
ない場合、当該概算保険料を立て替えて納付しなければならない。
【 H6−雇保10−D 】
労働保険事務組合は、事業主に代わって、事業主が政府に対して負う労働保険
料その他の徴収金のすべての納付の責めに任ずるものであり、労働保険事務
組合が労働保険料を納付しないときは、政府は当該労働保険事務組合に対して
督促を行う。
【 H11−雇保10−D 】
労働保険事務組合に委託する事業主が、労働保険料その他の徴収金を納付する
ため、金銭を労働保険事務組合に交付したときは、その金額の限度で、労働
保険事務組合には、政府に対して当該徴収金の納付責任がある。
【 H16−労災10−C 】
事業主が、労働保険事務の処理を委託した労働保険事務組合に労働保険料等の
納付のため金銭を交付したときは、その金額の限度で、労働保険事務組合は、
政府に対して当該労働保険料等の納付の責めに任ずる。
【 H17−雇保10−B 】
事務組合に委託する事業主が、労働保険料その他の徴収金を納付するため、
金銭を事務組合に交付したときは、その金額の限度で、事務組合は、政府に
対して当該徴収金の納付責任がある。
☆☆======================================================☆☆
労働保険事務組合は、事業主の委託を受けて労働保険事務の処理を行います。
その1つに、労働保険料等の納付があります。
この労働保険事務組合が行う納付というのは、あくまでも、事業主から納付
すべき金銭が交付された場合に、その範囲で行うものです。
徴収法では、
第33条第1項の委託に基づき、事業主が労働保険関係法令の規定による労働
保険料その他の徴収金の納付のため、金銭を労働保険事務組合に交付したとき
は、その金額の限度で、労働保険事務組合は、政府に対して当該徴収金の納付
の責めに任ずるものとする。
と規定しています。
ですので、事業主が金銭を交付しないのであれば、労働保険事務組合には、納付
する義務は生じません。
立て替えて納付するなんてことになったら、労働保険事務組合の負担が大きく
なり過ぎます。そのため、そこまでは求められていません。
【 H25−雇保8−A 】では「立て替えて納付しなければならない」とあり、
誤りです。
【 H6−雇保10−D 】では「事業主に代わって・・・すべての納付の責め
に任ずるものであり」とありますが、納付責任があるのは、交付を受けた分だけ
ですから、この問題も誤りです。
その次の3問は正しいです。
労働保険事務組合が納付責任を負うのは、事業主からに交付を受けた金額の
限度ですからね。
この箇所は、いろいろと言い回しを変えて誤りにしてくるってこと、今後も
あるでしょうから、間違えないようにしましょう。
それと、【 R5−労災9−D 】も「事業主が当該追徴金を納付するための金銭
を当該労働保険事務組合に交付しなかったときは、当該労働保険事務組合は政府
に対して当該追徴金の納付責任を負うことはない」としていますが、この問題の
場合、前提が違います。
この問題の追徴金の徴収については、労働保険事務組合の責めに帰すべき理由
があるため生じたものです。
このような場合、その限度で、当該労働保険事務組合は、政府に対して当該追徴
金の納付責任を負うことになるので、「納付責任を負うことはない」というのは
誤りです。
事業主が労働保険事務組合に金銭を交付しない場合、常に労働保険事務組合に
納付責任がないというわけではないので、この点、注意しておきましょう。
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今回は、令和5年−徴収法〔労災〕・問9−A「労働保険事務組合・委託事業主」
です。
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労働保険事務組合の主たる事務所が所在する都道府県に主たる事務所を持つ
事業の事業主のほか、他の都道府県に主たる事務所を持つ事業の事業主につい
ても、当該労働保険事務組合に労働保険事務を委託することができる。
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「労働保険事務組合・委託事業主」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H29−雇保10−B 】
労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託することができる事業主は、
継続事業(一括有期事業を含む。)のみを行っている事業主に限られる。
【 H21−労災8−C 】
常時300人以下の労働者を使用する建設の事業の事業主は、事業の期間が
予定される有期事業(一括有期事業を除く。)については、労働保険事務組合
に労働保険事務の処理を委託することはできない。
【 H29−雇保10−A 】
労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託することができる事業主は、
当該労働保険事務組合の主たる事務所が所在する都道府県に主たる事務所
をもつ事業の事業主に限られる。
【 H15−雇保9−B 】
労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託することができる事業主は、
労働保険事務組合の主たる事務所が所在する都道府県に主たる事務所を
有するものに限られる。
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労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託することができる事業主の
要件は、規模要件などがありますが、それら以外にも論点にされる点があり、
ここに掲載した問題は、それらに関するものです。
委託することができる中小事業主って、継続事業の事業主であるか、有期事業
の事業主であるかは問いません。この点も何度も出題されています。
【 H29−雇保10−B 】と【 H21−労災8−C 】では、有期事業の事業主
は、委託することができない内容となっているので、誤りです。
有期事業だからといって委託することをできなくするというような合理的な
理由はありませんから、有期事業の事業主であっても委託することができます。
さらに、もう1つ論点があります。それは地域的な要件です。
労働保険事務組合の主たる事務所が所在する都道府県に主たる事務所を有する
事業主に限って委託することができるかどうかですが、これは限定されません。
他の都道府県に事務所を有する事業主も委託することは可能です。
したがって、【 H29−雇保10−A 】と【 H15−雇保9−B 】は誤りで、
【 R5−労災9−A 】は正しいです。
ちなみに、令和元年度までは、委託事業主について、一定の地域的制限があった
ので、労働保険事務組合の主たる事務所の所在する都道府県以外の都道府県に
主たる事務所が所在する事業の事業主は、いくらでも委託ができたのではあり
ません。そのため、このような出題が行われています。
ということで、委託事業主に関する問題の論点は
(1) 団体の構成員に限定されない
(2) 中小事業主に限られる
(3) 継続事業であるか、有期事業であるかは問わない
(4) 地域的な制限はない
の4つです。これらをしっかりと確認しておきましょう。
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