令和5年−労災法・選択「休業補償給付」

  • 2023.11.03 Friday
  • 03:00

 

今回は、令和5年−労災法・選択「休業補償給付」です。

☆☆======================================================☆☆

労災保険法第14 条第1項は、「休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は
疾病による( A )のため労働することができないために賃金を受けない日
の第 ( B ) 日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎
日額の( C )に相当する額とする。

☆☆======================================================☆☆

「休業補償給付」に関する問題です。

次の問題をみてください。

☆☆======================================================☆☆

【 H17−4−C[改題]】
休業補償給付、複数事業労働者休業給付又は休業給付は、業務上の事由、複数
事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による傷病の療養
のため労働することができないために賃金を受けない日の第4日目から支給
される。

【 H12−3−B 】
休業補償給付は、労働者が業務上の傷病による療養のため労働することができ
ないために賃金を受けない日の属する週の翌週から支給される。

【 H30−5−A 】
休業補償給付は、業務上の傷病による療養のため労働できないために賃金を
受けない日の4日目から支給されるが、休業の初日から第3日目までの期間
は、事業主が労働基準法第76条に基づく休業補償を行わなければならない。

【 H21−4−A 】
休業補償給付は、業務上の傷病による療養のため労働することができないため
に賃金を受けない日の第4日目から支給されるが、それまでの3日間について
は、労働基準法第76条により使用者が直接に休業補償を行わなければならない。

【 H15−4−A 】
労働者が業務上の傷病による療養のため労働することができないために賃金
を受けない場合には、その第1日目から第3日目までは使用者が労働基準法
第76条の規定に基づく休業補償を行い、第4日目からは休業補償給付が支給
される。

【 H24−2−E 】
休業給付が支給されない休業の初日から第3日目までの待期期間について、
事業主は労働基準法に基づく休業補償の義務を負わない。

【 H15−4−B 】
労働者が通勤による傷病に係る療養のため労働することができないために
賃金を受けない場合には、使用者による休業補償はないが、給付費用の一部
負担金に相当する額を減額した休業給付が第1日目から支給される。

【 H8−2−C 】
 労働基準法上使用者に補償義務が課されていない通勤による傷病に基づく
休業についても、休業給付は待期期間3日間を経過した第4日目から支給
される。

☆☆======================================================☆☆

「休業(補償)等給付の待期」に関する問題です。

休業補償給付、複数事業労働者休業給付、休業給付いずれについても支給
開始は、「療養のため労働することができないために賃金を受けない日」の
4日目からです。
ですので、【 H17−4−C[改題]】は正しく、【 H12−3−B 】は誤りです。
「翌週から」ではありません。
【 R5−選択 】のBの答えは「4」です(Aの答えは「療養」、Cの答えは
「100分の60」です)。
この点は、基本中の基本です。絶対に間違えてはいけません。

そこで、待期期間中について、
労働基準法の休業補償を行わなければならないのかどうかといえば、
業務災害の場合には、当然、使用者に補償の義務があります。
複数業務要因災害については、それぞれの就業先の業務上の負荷のみでは
業務と疾病等との間に因果関係が認められないことから、いずれの就業先
も労働基準法上の災害補償責任は負いません。
通勤災害については、通常、事業主に直接的な責任はありませんから、災害
補償を行う必要はありません。

【 H30−5−A 】、【 H21−4−A 】、【 H15−4−A 】は、待期期間中
は労働基準法の規定に基づき休業補償が行われることを出題したものです。
いずれも、業務災害による「休業補償給付」に関するものですから、その
とおり正しいです。


【 H24−2−E 】、【 H15−4−B 】、【 H8−2−C 】は、「休業給付」
とあるので、通勤災害の場合です。
【 H24−2−E 】は、待期期間中、「事業主は労働基準法に基づく休業補償
の義務を負わない」としているので、正しいです。
【 H15−4−B 】ですが、「使用者による休業補償はない」という箇所は、
そのとおりです。
ただ、だからといって、休業初日から休業給付が支給されるのかといえば、
それはありませんよ。もちろん誤りです。

休業補償は、労働基準法の規定に基づくものであって、労災保険法で規定して
いるのではありません。
ですから、労災保険制度内において休業補償給付と休業給付とで支給開始
時期に差をつけるなんてことはありません。
いずれも4日目から支給です。

ということで、【 H8−2−C 】は、正しいです。

「休業補償給付・複数事業労働者休業給付・休業給付の待期」、
それぞれで出題されれば、その間、使用者に休業補償の義務があるかどうか、
判断することは、難しくないので、間違えないかと思います。
ただ、労災保険法の問題、
「休業補償給付、複数事業労働者休業給付又は休業給付は・・・」というよう
に、3つを並べて出題してくるってことがあります。
このような場合、いずれの扱いも考える必要があります。
問題文をしっかり読まず、「休業補償給付」だけのことなんて思い込んで、間違え
てしまわないよう、注意しましょう。

 

令和5年−労災法・問6−C「不服申立ての前置等」

  • 2023.10.27 Friday
  • 03:00

 

今回は、令和5年−労災法・問6−C「不服申立ての前置等」です。

☆☆======================================================☆☆

処分の取消しの訴えは、再審査請求に対する労働保険審査会の決定を経た後
でなければ、提起することができない。

☆☆======================================================☆☆

「不服申立ての前置等」に関する問題です。

次の問題をみてください。

☆☆======================================================☆☆

【 H12−7−E 】
保険給付に関する処分の取消しの訴えは、この処分についての審査請求に
対する労働者災害補償保険審査官の決定を経た後でなければ、提起すること
ができないが、審査請求がされた日から3か月を経過しても決定がないとき
は、この限りでない。

【 H23−4−B 】
保険給付に関する決定についての審査請求に係る労働者災害補償保険審査官
の決定に対して不服のある者は、再審査請求をした日から3か月を経過して
も裁決がないときであっても、再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を
経ずに、処分の取消しの訴えを提起することはできない。

【 H12−7−B[改題]】
保険給付に関する処分の取消しの訴えは、この処分についての審査請求に
対する労働者災害補償保険審査官の決定を経た後でなければ、提起すること
ができないが、審査請求がされた日から6か月を経過しても決定がないとき
は、この限りでない。

【 R5−6−B 】
審査請求をした日から1か月を経過しても審査請求についての決定がない
ときは、審査請求は棄却されたものとみなすことができる。

【 H29−選択 】
労災保険の保険給付に関する決定に不服のある者は、( A )に対して
審査請求をすることができる。審査請求は、正当な理由により所定の期間
内に審査請求することができなかったことを疎明した場合を除き、原処分
のあったことを知った日の翌日から起算して3か月を経過したときはする
ことができない。審査請求に対する決定に不服のある者は、 ( B )
に対して再審査請求をすることができる。審査請求をしている者は、審査
請求をした日から( C )を経過しても審査請求についての決定がない
ときは、( A )が審査請求を棄却したものとみなすことができる。

☆☆======================================================☆☆

「不服申立ての前置等」に関する問題です。
保険給付に関する決定の処分の取消しの訴えについては、不服申立て前置
主義がとられています。これは、保険給付に関する処分は大量に行われ、
行政の統一を図る必要があり、処分の内容も専門的知識を要するものが多く、
特に保険給付に関する審査請求及び再審査請求の審理は第三者的機関が担当
していること、かつ、裁判における訴訟手続、費用、係争期間を考えれば、
行政庁に対する不服申立てを前置することが行政及び司法の機能との調和
を保ちつつ簡易迅速に国民の権利、利益の救済を図るのに有効であると認め
られるからです。
この「不服申立ての前置」は、元々、「保険給付に関する決定に係る処分の
取消しの訴えは、当該処分についての再審査請求に対する労働保険審査会
の裁決を経た後でなければ、提起することができない」と規定されていまし
たが、行政不服審査法の改正に伴い、現在は、「第38条第1項に規定する
処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する労働者災害
補償保険審査官の決定を経た後でなければ、提起することができない」と
されています。
また、審査請求手続と再審査請求手続は、いずれも行政機関内部の争訟手続
であり、両手続が同時並行して継続するような事態は、回避することが必要
であるため、審査請求後3か月を経過しても労働者災害補償保険審査官の
決定がない場合、審査請求手続は終了させることとしています(労働者災害
補償保険審査官が審査請求を棄却したものとみなすこととしています)。
そのため、保険給付に関する決定の処分の取消しの訴えは、当該処分について
の審査請求に対する労働者災害補償保険審査官の決定を経た後でなければ、
提起することができませんが、労働者災害補償保険審査官が審査請求を棄却
したものとみなしたのであれば、処分の取消しの訴えをすることができること
になります。

ということで、【 H12−7−E 】は、出題時は誤りでしたが、現在の規定では
正しいです。
【 H23−4−B 】では「再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経ず」
とあり、【 R5−6−C 】では「労働保険審査会の決定を経た後でなければ」
とあるので、いずれも誤りです。

【 H12−7−B[改題]】と【 R5−6−B 】は論点が違っていて、審査請求
が棄却されたものとみなされる期間についてで、それぞれ、「6か月」と「1か月」
としていますが、正しくは、「3か月」なので、いずれも誤りです。

【 H29−選択 】の答えは、
A:労働者災害補償保険審査官
B:労働保険審査会
C:3か月
です。

これらの規定は選択式で空欄にすることができそうな語句が多くあるので、再び
選択式で出題されることがあるでしょう。
ですので、キーワードは、正確に覚えておきましょう。

 

令和5年−労災法・問2「障害補償給付/併合・併合繰上げ」

  • 2023.10.20 Friday
  • 03:00

 

今回は、令和5年−労災法・問2「障害補償給付/併合・併合繰上げ」です。

☆☆======================================================☆☆

業務上の災害により、ひじ関節の機能に障害を残し(第12級の6)、かつ、
四歯に対し歯科補てつを加えた(第14級の2)場合の、障害補償給付を支給
すべき身体障害の障害等級として正しいものはどれか。
A 併合第10級
B 併合第11級
C 併合第12級
D 併合第13級
E 併合第14級

☆☆======================================================☆☆

「障害補償給付/併合・併合繰上げ」に関する問題です。

次の問題をみてください。

☆☆======================================================☆☆

【 H12−4−B 】
障害補償給付を支給すべき障害が二以上ある場合の障害等級は、重い方の
障害等級によるが、次の場合には、重い方の障害をそれぞれ当該各号に掲げる
等級だけ繰り上げた等級による。
(1) 第13級以上の障害が二以上あるとき   1級
(2) 第9級以上の障害が二以上あるとき   2級
(3) 第6級以上の障害が二以上あるとき   3級

【 H30−6−E 】
障害等級表に該当する障害が2以上あって厚生労働省令の定める要件を
満たす場合には、その障害等級は、厚生労働省令の定めに従い繰り上げた
障害等級による。具体例は次の通りである。
(1) 第5級、第7級、第9級の3障害がある場合     第3級
(2) 第4級、第5級の2障害がある場合         第2級
(3) 第8級、第9級の2障害がある場合         第7級

【 H21−6−C 】
障害等級表に該当する障害が2以上あって厚生労働省令の定める要件を
満たす場合には、その障害等級は、厚生労働省令の定めるところに従い
繰り上げた障害等級による。繰り上げた障害等級の具体例を挙げれば、
次のとおりである。
(1) 第8級、第11級及び第13級の3障害がある場合 第7級
(2) 第4級、第5級、第9級及び第12級の4障害がある場合 第1級
(3) 第6級及び第8級の2障害がある場合 第4級

【 H20−3−E 】
障害補償給付を支給すべき身体障害の障害等級については、同一の業務
災害により第5級以上に該当する身体障害が2以上残った場合は、第1級
を上限として、重い方の身体障害の障害等級を3級だけ繰り上げた障害
等級による。

【 H10−2−E 】
同一の業務災害により第4級と第5級の二つの身体障害を残した場合には、
原則として障害等級第1級の障害補償給付が支給される。

【 H4−3−D 】
同一業務災害により、1手の中指を失い(障害等級第11級の身体障害)、
かつ、3歯に対し歯科補てつを加えた(障害等級第14級の身体障害)場合
は、障害等級第10級の障害補償一時金が支給される。

【 H8−記述 】
障害の系列を異にする身体障害について、障害等級が第( B )級以上に
該当するものが2以上あるときは、重い方の障害等級を2級だけ繰り上げた
障害等級により、障害等級が第( C )級以上に該当するものが2以上ある
ときは、重いほうの障害等級を3級だけ繰り上げた障害等級によることを原則
とする。

☆☆======================================================☆☆

「障害等級の併合・併合繰上げ」に関する問題です。
この規定については、ご覧のように、とにかく、よく出題されます。
出題の形式も様々で、記述式からの出題もあり、択一式からの出題もあり、
択一式では1問構成の場合もあるし、単に1肢としての出題もあります。

「障害等級の併合繰上げ」については、
複数の身体障害を残し、かつ、第13級以上の障害が2以上あるときは、
その障害等級に応じて重いほうの身体障害の等級を次のように繰り上げ
ます。
1. 第13級以上の障害が2以上あるとき:1級繰り上げる。
2. 第8級以上の障害が2以上あるとき:2級繰り上げる。
3. 第5級以上の障害が2以上あるとき:3級繰り上げる。

ですので、【 H12−4−B 】は、誤りです。
「第9級」とあるのは「第8級」、「第6級」とあるのは「第5級」です。

障害の系列を異にする身体障害が2以上あるとき、それらを併せた状態として
の等級を定めることは、難しい面があるので、このような基準を設けて、決定
するようにしています。

そこで、【 H30−6−E 】と【 H21−6−C 】では、事例として3つの
パターンを挙げていますが、【 H30−6−E 】の(2)の場合、前記の3.に該当
するので、第4級を3級繰り上げた第1級となるため、誤りです。

【 H21−6−C 】については、
(1) 第8級、第11級及び第13級の3障害がある場合は、
前記1.に該当するので、第8級を1級繰り上げ、第7級となります。
(2) 第4級、第5級、第9級及び第12級の4障害がある場合は、
前記3.に該当するので、第4級を3級繰り上げ、第1級となります。
(3) 第6級及び第8級の2障害がある場合は、
前記2.に該当するので、第6級を2級繰り上げ、第4級となります。
ということで、正しいです。

次に、【 H20−3−E 】と【 H10−2−E 】ですが、これらは、いずれも
3.に該当するので、正しいです。

【 H4−3−D 】は、一方の障害が第14級です。
この場合、繰上げは行いません。
第13級以上の障害に第14級の障害を加えても、1つ上の等級として評価
するほどの状態にはならないので、繰上げを行いません。
【 H4−3−D 】では1級繰り上げた内容となっているので、誤りです。
【 R5―2 】も一方の障害が第14級の場合なので、答えは
「C 併合第12級」です。

【 H8−記述 】の答えは
B:8   C:5
です。

さすがに、これだけ出題されていますから、今後も、繰り返し出題されるで
しょう。ということで、労災保険において、この等級は、優先して覚えるべき
ものの1つといえます。
この問題が出たときに間違えるようだと、はっきりいって、他の受験生に1点
ハンディをあげたようなものですから。
絶対に、間違えないようにしましょう。

 

 

令和4年−労災法問6−C「通勤における逸脱・中断」

  • 2022.11.04 Friday
  • 04:00


今回は、令和4年−労災法問6−C「通勤における逸脱・中断」です。

☆☆======================================================☆☆

通常深夜まで働いている男性労働者が、半年ぶりの定時退社の日に、就業の
場所からの帰宅途中に、ふだんの通勤経路を外れ、要介護状態にある義父を
見舞うために義父の家に立ち寄り、一日の介護を終えた妻とともに帰宅の途に
つき、ふだんの通勤経路に復した後は、通勤に該当する。

☆☆======================================================☆☆

「通勤における逸脱・中断」に関する問題です。

次の問題をみてください。

☆☆======================================================☆☆

【 H18−1−D 】
通勤としての移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合における逸脱又は
中断の間及びその後の移動は、原則として通勤に該当しない。

【 H28−5−オ 】
労災保険法第7条に規定する通勤の途中で合理的経路を逸脱した場合でも、
日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない
事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱の間も含め
同条の通勤とする。

【 H23−4−A 】
労災保険法第7条に規定する通勤の途中で合理的経路を逸脱した場合でも、
日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない
事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱の間も含め
同条の通勤とする。

【 H11−1−A 】
労働者が、就業に関し、自宅と就業の場所との間を往復するに際し、通勤に
必要な合理的な経路を逸脱した場合であっても、日常生活上必要な行為を
行うためにやむを得ない理由があれば、当該逸脱の間に生じた災害について
も保険給付の対象になる。

【 H27−3−E 】
会社からの退勤の途中で美容院に立ち寄った場合、髪のセットを終えて直ち
に合理的な経路に復した後についても、通勤に該当しない。

【 H13−1−E 】
通勤の途中、理美容のため理髪店又は美容院に立ち寄る行為は、特段の事情
が認められる場合を除き、日常生活上必要な行為とみることができ、その後
合理的な経路に復した後は通勤と認められる。

【 H25−4−オ 】
女性労働者が一週間に数回、やむを得ない事情により、就業の場所からの帰宅
途中に最小限の時間、要介護状態にある夫の父を介護するために夫の父の家
に立ち寄っている場合に、介護終了後、合理的な経路に復した後は、再び通勤
に該当する。

【 H9−記述[改題]】
労働者が通勤の移動の経路を( B )し、又はその移動を( C )した
場合には、当該( B )又は( C )の間及びその後の移動は通勤とは
されない。

☆☆======================================================☆☆

通勤の定義に関しては、頻繁に出題されています。
で、これらの問題は、逸脱又は中断の間やその後の移動は通勤となるか否か
というのが論点です。

逸脱や中断をしてしまえば、通勤という行為をしている状態ではなくなるの
ですから、当然、通勤としては認められません。
ということで、【 H18−1−D 】は正しいです。

では、逸脱をしたけど、それが日常生活上必要な行為であった場合は、どう
なるのでしょうか?
【 H28−5−オ 】と【 H23−4−A 】では、逸脱の間も通勤になるとして
います。
【 H11−1−A 】も、「その間の災害も保険給付の対象となる」としている
ので、やはり、逸脱の間も通勤になるということです。
逸脱の間は、いくらなんでも、実際に通勤という行為をしていないのですから、
いかなる理由であっても、通勤としては認められません。
いずれも誤りです。

この逸脱・中断に関して、事例として出題されることもあります。
それが、【 H27−3−E 】、【 H13−1−E 】、【 H25−4−オ 】と
【 R4−6−C 】です。

【 H27−3−E 】と【 H13−1−E 】では、逸脱・中断の理由を
「美容院に立ち寄った」「理美容のため理髪店又は美容院に立ち寄る行為」
としています。
この行為は、日常生活上必要な行為となりますが、この行為をしている間は、
当然、通勤にはなりません。
ただ、合理的な経路に戻れば、その後は、通勤と認められます。
ですので、【 H27−3−E 】は誤りで、【 H13−1−E 】は正しいです。

【 H25−4−オ 】は、「要介護状態にある夫の父を介護するため」の逸脱・
中断です。この行為も、日常生活上必要な行為と認められるので、合理的な
経路に復した後は通勤となるため、正しいです。
では、【 R4−6−C 】ですが、こちらは「見舞うため」であって、「日常
生活上必要な行為」には該当しません。
したがって、その後、通勤経路に復したとしても通勤には該当しないので、
誤りです。
ちなみに、もし「介護するため」であったとしても、継続的に又は反復して
行われる状態ではないので、やはり、「日常生活上必要な行為」には該当しま
せん。

通勤の移動経路からそれたり、経路上であっても、通勤のための移動をし
ていないのであれば、それは、いかなる理由であっても、通勤ではありません。
しかし、逸脱・中断が
「日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない
事由により行うための最小限度のものである場合」
には、再び合理的な経路に戻って移動をするのであれば、それは通勤と認め
られます。

ということで、通勤の定義については、
択一式では、事例的な問題に、特に注意しましょう。

それと、【 H9−記述[改題]】のように、選択式での出題実績もあります
から、選択式対策も怠らずに。
【 H9−記述[改題]】の答えは、B:逸脱  C:中断  です。

 

 

令和3年−労災法問3−B「特別加入者に係る通勤災害」

  • 2021.11.26 Friday
  • 04:00

 

今回は、令和3年−労災法問3−B「特別加入者に係る通勤災害」です。

☆☆======================================================☆☆

労働者を使用しないで行うことを常態とする特別加入者である個人貨物運送業者に
ついては、その住居とその就業の場所との間の往復の実態を明確に区別できること
にかんがみ、通勤災害に関する労災保険の適用を行うものとされている。

☆☆======================================================☆☆

「特別加入者に係る通勤災害」に関する問題です。

次の問題をみてください。

☆☆======================================================☆☆

【 H22―1―D 】
一人親方等の特別加入者のうち、漁船による水産動植物の採捕の事業を労働者
を使用しないで行うことを常態とする者は、自宅から漁港までの移動が通勤と
みなされ、通勤災害に関しても労災保険の適用を受けることができる。

【 H11―4―D[改題]】
特別加入におけるいわゆる一人親方等のうち、自動車を使用して行う旅客又は
貨物の運送の事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする者など、住居
と就業の場所との間の往復の状況等を考慮して厚生労働省令で定める者について
は、通勤災害に関する保険給付は行われない。

【 H16―2―E[改題]】
一人親方等の特別加入者のうち、1)自動車を使用して行う旅客若しくは貨物
の運送の事業又は原動機付自転車若しくは自転車を使用して行う貨物の運送の
事業又は漁船による水産動植物の採捕の事業(船員が行う事業を除く。)を労働
者を使用しないで行うことを常態とする者及びこれらの者が行う事業に従事する
者、2)農業における所定の作業に従事する者、3)家内労働法にいう家内労働
者及びその補助者で所定の作業に従事するものは、通勤災害に関しては労災保険
の保険給付を受けることができない。

【 H20―2―C 】
一人親方等の特別加入者のうち、自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送
の事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする者その他の労働者災害
補償保険法施行規則第46条の22の2に定める者は、通勤災害に関する労災
保険の保険給付を受けることができない。

【 H26―7―A 】
特別加入制度において、個人貨物運送業者については通勤災害に関する保険給付
は支給されない。

【 H26―7―B 】
特別加入制度において、家内労働者については通勤災害に関する保険給付は支給
されない。

☆☆======================================================☆☆

一人親方等の特別加入者に通勤災害保護制度が適用されるかどうかを論点に
した問題です。

【 R3−3−B 】では、「個人貨物運送業者」について、通勤災害に関する
労災保険の適用を行うとしています。
【 H22−1−D 】では、「漁船による水産動植物の採捕の事業を労働者を使用
しないで行うことを常態とする者」について、通勤災害に関しても労災保険の適用
を受けるとしています。
そのほかの問題では、「一人親方等の特別加入者のうち一定の者について、通勤
災害に関する保険給付は行われない」という内容になっています。

● 自動車を使用して行う旅客もしくは貨物の運送の事業を行う者又は原動機付
 自転車もしくは自転車を使用して行う貨物の運送の事業を労働者を使用しな
 いで行うことを常態とする者
● 漁船による水産動植物の採捕の事業(船員が行う事業を除きます)を労働者 
 を使用しないで行うことを常態とする者
● 特定農作業従事者
● 指定農業機械作業従事者
● 家内労働者等
これらについては、通勤災害保護制度が適用されません。

これらの者って、通勤の実態が明確にできないんです。
通勤そのものがあるのか?もしあったとしたら・・・
どこからどこまでが通勤なんだ?
という状況になってしまうので、住居と就業の場所との間の往復の状況等を考慮
して、適用しないようにしています。

ですので、 【 R3−3−B 】と【 H22−1−D 】は誤りで、他の問題は
正しいです。


通勤災害保護制度が適用されないのは、どのような特別加入者なのか、ちゃんと
確認しておきましょう。

そうそう・・・
中小事業主等や海外派遣者は、その業務にかかわらず、適用されるので、
間違えないように。
 

 

令和2年−労災法問7−B「特別支給金の支給の申請」

  • 2020.12.11 Friday
  • 05:00

今回は、令和2年−労災法問7−B「特別支給金の支給の申請」[改題]です。

☆☆======================================================☆☆

特別支給金の支給の申請は、原則として、関連する保険給付の支給の請求と同時に
行うこととなるが、傷病特別支給金、傷病特別年金の申請については、当分の間、
休業特別支給金の支給の申請の際に特別給与の総額についての届出を行っていない
者を除き、傷病補償年金、複数事業労働者傷病年金又は傷病年金の支給の決定を
受けた者は、傷病特別支給金、傷病特別年金の申請を行ったものとして取り扱う。

☆☆======================================================☆☆

「特別支給金の支給の申請」に関する問題です。

次の問題をみてください。

☆☆======================================================☆☆


【 H17−3−B[改題]】
特別支給金は、原則として、これを受けることのできる者の申請に基づき支給
されるものであるが、傷病補償年金、複数事業労働者傷病年金又は傷病年金の
支給の決定を受けた者については、当分の間、傷病特別支給金の申請があった
ものとして扱って差し支えないとされている。

【 H28−7−C[改題]】
傷病特別支給金は、受給権者の申請に基づいて支給決定されることになっている
が、当分の間、事務処理の便宜を考慮して、傷病補償年金、複数事業労働者傷病
年金または傷病年金の支給を受けた者は、傷病特別支給金の申請を行ったもの
として取り扱って差し支えないこととされている。


☆☆======================================================☆☆

「特別支給金の支給の申請」に関する問題です。

傷病(補償)等年金は、所轄労働基準監督署長の職権によって支給決定される
ため、労働者が請求する必要はありませんが、傷病特別支給金や傷病特別年金は、
労働者災害補償保険特別支給金支給規則において、
傷病特別支給金(傷病特別年金)の支給を受けようとする者は、所定の事項を記載
した申請書を、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
とされていて、労働者の申請によって支給決定されます。

しかし、特別支給金だけを申請に基づき支給することとすると、申請漏れが生じ
たり、事務処理が煩雑となることもあることから、当分の間、その便宜を考慮し、
傷病(補償)等年金の支給決定を受けた労働者は、休業特別支給金の支給の申請の
際に特別給与の総額についての届出を行っていない者を除き、傷病特別支給金や
傷病特別年金の申請があったものとして取り扱って差し支えないこととされてい
ます。

ですので、3問いずれも正しいです。

このような扱いがあるのは、特別支給金のうち傷病特別支給金と傷病特別年金
だけであって、他の特別支給金を受けるには申請が必要です。
この点、注意しておきましょう。
 

 

 

令和2年−労災法問2−A「死亡の推定」

  • 2020.12.04 Friday
  • 05:00

今回は、令和2年−労災法問2−A「死亡の推定」です。

☆☆======================================================☆☆

船舶が沈没した際現にその船舶に乗っていた労働者の死亡が3カ月以内に明らか
となり、かつ、その死亡の時期がわからない場合には、遺族補償給付、葬祭料、
遺族給付及び葬祭給付の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没
した日に、当該労働者は、死亡したものと推定する。

☆☆======================================================☆☆

「死亡の推定」に関する問題です。

次の問題をみてください。

☆☆======================================================☆☆


【 H27−5−D 】
船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となった際現にその船舶に乗っ
ていた労働者又は船舶に乗っていてその船舶の航行中に行方不明となった労働者の
生死が3カ月間わからない場合には、遺族補償給付、葬祭料、遺族給付及び葬祭給付
の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しく
は行方不明となった日又は労働者が行方不明となった日に、当該労働者は、死亡した
ものと推定することとされている。

【 H16−6−B 】
船舶の沈没、行方不明等により、又は航空機の墜落、行方不明等により、それらに
乗っていた労働者若しくはそれらが航行中に行方不明となった労働者の生死が6カ
月間わからない場合又はこれらの労働者の死亡が6カ月以内に明らかとなり、かつ、
その死亡の時期がわからない場合には、遺族補償給付、葬祭料、遺族給付及び葬祭
給付の支給に関する規定の適用については、船舶の沈没、行方不明等の日若しくは
航空機の墜落、行方不明等の日又は労働者が行方不明となった日に、当該労働者は、
死亡したものと推定される。

【 R2−2−B 】
航空機に乗っていてその航空機の航行中行方不明となった労働者の生死が3カ月間
わからない場合には、遺族補償給付、葬祭料、遺族給付及び葬祭給付の支給に関する
規定の適用については、労働者が行方不明となって3カ月経過した日に、当該労働者
は、死亡したものと推定する。

【 H27−5−E 】
航空機が墜落し、滅失し、若しくは行方不明となった際現にその航空機に乗っていた
労働者又は航空機に乗っていてその航空機の航行中行方不明となった労働者の生死が
3か月間わからない場合には、遺族補償給付、葬祭料、遺族給付及び葬祭給付の支給
に関する規定の適用については、その航空機が墜落し、滅失し、若しくは行方不明と
なった日又は労働者が行方不明となった日に、当該労働者は死亡したものと推定する
こととされている。


☆☆======================================================☆☆

「死亡の推定」に関する問題です。

「死亡の推定」は、労働者の遺族に対して迅速に保険給付を行うため、船舶と
航空機の事故に限定し、死亡が確定していなくとも、事故から一定期間が経過
した時点で、死亡したと推定するようにしたものです。

そのため、事故と死亡したと推定するまでの間があまり長いと適当ではないので、
船舶の事故であれば、
船舶が沈没し、転覆し、滅失し、もしくは行方不明となった際現にその船舶に乗っ
ていた労働者もしくは船舶に乗っていてその船舶の航行中に行方不明となった労働
者の生死が3カ月間わからない場合又はこれらの労働者の死亡が3カ月以内に明ら
かとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合には、「死亡の推定」の規定が
適用され、その船舶が沈没し、転覆し、滅失し、もしくは行方不明となった日又は
労働者が行方不明となった日に、当該労働者は、死亡したものと推定する
と、事故から3カ月間行方不明の状態が継続した場合に、死亡したと推定するよう
にしています。
航空機の事故についても、この期間は同じで、航空機が墜落し、滅失し、もしくは
行方不明となった際現にその航空機に乗っていた労働者もしくは航空機に乗って
いてその航空機の航行中行方不明となった労働者の生死が3カ月間わからない場合
又はこれらの労働者の死亡が3カ月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期が
わからない場合に、「死亡の推定」の規定が適用されます。

この点、【 H16−6−B】は、「生死が6カ月間わからない場合」「死亡が6カ月
以内に明らかとなり」とあり、「3カ月」であるべき箇所が「6カ月」となって
いるので、誤りです。

それと、【 R2−2−B 】は、「3カ月間わからない場合」という点は正しいの
ですが、死亡したものと推定される日について、「行方不明となって3カ月経過
した日」となっています。
そうではなく、事故のあった日、すなわち、「航空機が墜落し、滅失し、もしく
は行方不明となった日」又は「労働者が行方不明となった日」に、当該労働者は、
死亡したものと推定されます。

この2問以外の問題は、正しいです。

「死亡の推定」に関しては、これらの論点以外に、例えば、「推定する」という
箇所を「みなす」として誤りにしたという出題もありました。

ということで、論点にされる点がいくつもあるので、出題されたときは、
いずれの点にも注意しましょう。

 

令和1年−労災法問6−エ「特別加入者に係る特別支給金」

  • 2019.11.29 Friday
  • 05:00

今回は、令和1年−労災法問6−エ「特別加入者に係る特別支給金」です。

 


☆☆======================================================☆☆

 


特別加入者にも、傷病特別支給金に加え、特別給与を算定基礎とする傷病特別
年金が支給されることがある。

 


☆☆======================================================☆☆


「特別加入者に係る特別支給金」に関する問題です。

次の問題をみてください。


☆☆======================================================☆☆

 


【 H20−4−C 】

 

特別加入者に係る特別支給金制度の導入に当たっては、労働基準法上の災害
補償責任に係る企業内の福利厚生制度に由来する経緯もあり、特別加入者に
対する特別支給金の支給は、厚生労働省労働基準局長が定める特別の事由が
ある場合に限られる。

 


【 H17−3−D 】

 

特別支給金は、もともと事業主がその使用する労働者又はその遺族に対して
行う例が多かったいわゆる「上積み補償」に由来するものであるので、特別
加入者には支給されない。

 


【 H14−3−D 】

 

特別支給金は、労働者に対する災害補償の企業内上積みとしての経緯に由来する
ものであるので、特別加入者の業務災害及び通勤災害に関しては、支給は行われ
ない。

 


☆☆======================================================☆☆

 


「特別加入者に係る特別支給金」に関する問題です。

 

【 R1−6−エ 】以外の問題は、特別支給金に関して、「企業内上積みに
由来する経緯」があるというような理由を付けたうえで、
【 H20−4−C 】では、
厚生労働省労働基準局長が定める特別の事由がある場合に限り支給するとして
います。
【 H17−3−D 】と【 H14−3−D 】では、特別加入者には支給しないと
しています。

 

特別支給金のうち特別支給一時金については、被災労働者や遺族の福祉に必要な
施設として行われるもので、他の社会復帰促進等事業と同様に、災害補償たる保険
給付と相まって被災者等の保護の実効を期そうというものです。
ですので、特別加入者だから支給しないとか、特別の扱いをするとかは基本的には
ありません。
労働者と同様に保険給付の支給事由が生じれば支給されます。
ということで、これら3問は誤りです。

 

【 R1−6−エ 】では、特別加入者にボーナス特別支給金(傷病特別年金)が
支給されることがあるとしています。
ボーナス特別支給金は、保険給付の算定の基礎となる給付基礎日額にボーナス
などの特別給与が含まれていないので、保険給付を補完するために支給される
ものです。
特別加入者には、賃金という概念がありませんから、ボーナスもありません。
そのため、ボーナスを算定の基礎とするボーナス特別支給金は、特別加入者には
支給されません。
ですので、誤りです。

 

特別加入者は、労働者とは異なる取扱いをすることがあり、それを論点にした
出題がよくあるので、その点は注意しておきましょう。

 

 

令和1年−労災法問5−A「療養(補償)給付に係る指定病院等」

  • 2019.11.22 Friday
  • 05:00

今回は、令和1年−労災法問5−A「療養(補償)給付に係る指定病院等」です。

 


☆☆======================================================☆☆

 


療養の給付は、社会復帰促進等事業として設置された病院若しくは診療所又は
都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所、薬局若しくは訪問看護事業者
(「指定病院等」という。以下本問において同じ。)において行われ、指定病院等
に該当しないときは、厚生労働大臣が健康保険法に基づき指定する病院であっても、
療養の給付は行われない。

 


☆☆======================================================☆☆

 


「療養(補償)給付に係る指定病院等」に関する問題です。

 

次の問題をみてください。

 


☆☆======================================================☆☆

 


【 H27−2−A 】

 

療養の給付は、社会復帰促進事業としで設置された病院若しくは診療所又は
都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所、薬局若しくは訪問看護
事業者において行われる。

 


【 H19−4−A 】

 

療養の給付は、労災保険法第29条第1項の事業として設置された病院若しくは
診療所又は都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所、薬局若しくは
訪問看護事業者において行われる。

 


【 H17−7−E[改題]】

 

療養の給付は、社会復帰促進等事業として設置された病院若しくは診療所又は
厚生労働大臣の指定する病院若しくは診療所、薬局若しくは訪問看護事業者に
おいて行われる。

 


【 H5−3−B[改題]】

 

療養の給付は、社会復帰促進等事業として設置された病院若しくは診療所又は
都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所、薬局若しくは訪問看護事業
者において行う。

 


【 H21−3−A 】

 

療養補償給付のうち、療養の給付は、指定病院等において行われるほか、厚生
労働大臣が健康保険法に基づき指定する病院等においても行われる。

 


【 H14−2−B[改題]】

 

療養補償給付は、療養の給付を原則としており、この療養の給付は、社会復帰
促進等事業として設置された病院若しくは診療所又は都道府県労働局長の指定
する病院若しくは診療所、薬局若しくは訪問看護事業者において行うほか、
都道府県労働局長の指定がなくても、厚生労働大臣が健康保険法に基づき指定
する病院若しくは診療所又は薬局若しくは訪問看護事業者であれば行うことが
できる。

 


【 H15−3−E[改題]】

 

二次健康診断等給付は、労災保険法第29条第1項の社会復帰促進等事業として
設置された病院若しくは診療所又は都道府県労働局長が療養の給付を行う病院
若しくは診療所として指定した病院若しくは診療所において行う。

 


☆☆======================================================☆☆

 


療養の給付がどこで行われるかというのが論点ですが、単に「指定病院等」なんて
覚えていると出題者の思うツボですね。

指定病院等というのは、労災病院等と指定医療機関であり、これらって、具体的に
何かといえば、労災病院等は社会復帰促進等事業として設置された病院又は診療所
です。
では、指定医療機関というのは、文字通り「指定された医療機関」ですが、誰が
指定するのでしょうか。
「厚生労働大臣」ではありませんよ。
都道府県労働局長が指定します。

 

ということで、【 H17−7−E[改題]】は誤りで、
【 H19−4−A 】、【 H5−3−B[改題]】は正しいですね。
【 H27−2−A 】も正しいとされたのですが・・・
「社会復帰促進等事業」とすべき箇所が「社会復帰促進事業」とあり、「等」が
抜けています!なので、厳密には正しいとするのは「?」ともいえますが、労災
病院等は、社会復帰促進等事業のうち社会復帰促進事業として設置・運営が行われ
ているため、「社会復帰促進事業」とした可能性があります。

 

それと、【 R1−5−A 】、【 H21−3−A 】、【 H14−2−B[改題]】に
関連して、健康保険の保険給付の「療養の給付」を担当する病院などの1つに、
「保険医療機関等」というものがありますが、こちらは厚生労働大臣による指定
制を採っています。

【 H21−3−A 】と【 H14−2−B[改題]】は、いずれも問題文の前半は、
特に問題はありません。
ただ、後半部分ですが、「健康保険法に基づき指定する病院・・・・」と
保険医療機関等で労災保険の療養の給付が行われるといっています。
健康保険の指定と労災保険の指定は別物です。制度が違うのですから。

健康保険の保険医療機関等であっても、労災保険の指定を受けていないのであれば、
労災保険の保険給付を行うことはできません。
いずれも誤りです。
【 R1−5−A 】は、「厚生労働大臣が健康保険法に基づき指定する病院であっても、
療養の給付は行われない」としているので、正しいです。

 

別物という点では、【 H15−3−E[改題]】もそうです。
療養の給付に係る指定と二次健康診断等給付に係る指定、これも別物です。
「療養の給付に係る指定」、それと「二次健康診断等給付に係る指定」は、いずれも
都道府県労働局長が行いますが、療養の給付に係る指定を受けていたとしても、二次
健康診断等給付に係る指定がなければ、二次健康診断等給付は行えません。
ですので、こちらも誤りです。

 

ちなみに、二次健康診断等給付を実施する医療機関を、健診給付病院等といいます。

 

「療養の給付が行われる場所」については、今後も出題されるでしょうから、
確実に正誤の判断ができるようにしておきましょう。

 

 

 

令和1年−労災法問1−D「受診命令」

  • 2019.11.07 Thursday
  • 05:00

今回は、令和1年−労災法問1−D「受診命令」です。

 


☆☆======================================================☆☆

 


行政庁は、保険給付に関して必要があると認めるときは、保険給付を受け、又は
受けようとする者(遺族補償年金又は遺族年金の額の算定の基礎となる者を含む。)
に対し、その指定する医師の診断を受けるべきことを命ずることができる。

 


☆☆======================================================☆☆

 


「受診命令」に関する問題です。

 

次の問題をみてください。

 


☆☆======================================================☆☆

 


【 H20−6−C 】

 

行政庁は、保険給付に関して必要があると認めるときは、厚生労働省令で定める
ところによって、保険給付を受け、又は受けようとする者(遺族補償年金又は
遺族年金の額の算定の基礎となる者を含む)の診療を担当した医師その他の者に
対して、その行った診療に関する事項について、報告若しくは診療録、帳簿書類
その他の物件の提示を命じ、又は当該職員に、これらの物件を検査させることが
できる。

 


【 H23−7−D 】

 

保険給付を受け、又は受けようとする者(遺族補償年金又は遺族年金の額の算定
の基礎となる者を含む)の診療に関することは守秘義務事項に該当するため、行政
庁は、その診療を担当した医師に対して、診療録の提示を命じることはできない。

 


【 H15−5−E 】

 

行政庁は、保険給付に関して必要があると認めるときは、保険給付を受け、又は
受けようとする者の診療を担当した医師その他の者に対して、当該診療について
報告又は診療録その他の物件の提示を命ずることができ、当該報告又は物件の
提示を拒んだ場合には、政府は、保険給付の支払を一時差し止めることができる。

 


【 H16−6−A 】

 

行政庁は、保険給付に関して必要があると認めるときは、保険給付を受け、又は
受けようとする者(死亡した労働者の遺族を除く)に対し、その指定する医師の
診断を受けるべきことを命ずることができる。

 


☆☆======================================================☆☆

 


「診療担当者に対する命令等」と「受診命令」に関する問題です。

 

政府が保険給付を適切に行うためには、被災労働者の傷病の状態や障害の状態
などを確認する必要が生ずることがあります。
そのために、診療担当者などに報告を求めたりすることができる根拠となる
規定を設けています。

 

で、【 H20−6−C 】は条文どおりでして、正しいです。


これに対して、【 H23−7−D 】では、
「守秘義務事項に該当するため」なんて、もっともらしい理由を付けて、「診療録
の提示を命じることはできない」としていますが・・・
提示を命ずることができますから、誤りです。

 

【 H15−5−E 】は同じ規定に関連する問題ですが、ちょっと論点が違います。
命令を受けた者がそれを拒んだ場合どうなるのか、という部分が論点です。
保険給付を受ける者は何も悪いことはしていないのに、支払の差止めなんて
おかしな話です。
ですから、当然、保険給付の支払を一時差し止めることはできません。
命令を拒んだ医師等に対して罰則が適用されます。

 

【 H16−6−A 】は、これらの問題の規定とは違い、
受診命令の規定に関する出題ですが・・・
カッコ書きの箇所、
「死亡した労働者の遺族を除く」
とあります。
この部分が誤りです。
正しくは、
「遺族補償年金又は遺族年金の額の算定の基礎となる者を含む」
です。
【 R1−1−D 】は「含む」とあるので、正しいです。

 

このカッコ書きは、「診療担当者に対する命令等」の規定にもあるので、
同じような誤りの出題がされるってこと、あり得ます。
カッコ書きの中の誤りに気が付かないということありがちですから、注意しましょう。

 

それと、行政庁の監督権に関する規定、勉強が疎かになっているってこと、あります。
ただ、このように出題があるので、論点にされた箇所を中心に、ちゃんと確認をして
おきましょう。

 

 

 

PR

calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2024 >>

selected entries

categories

archives

recommend

recommend

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM